omi: 今回のライパの作品
----------ケイティ・ミン--------
大通りの喧騒を抜けた路地の一画。ここに小さなバーがある。オーナーの名前はケイティ・ミン。とても無口な女性。カウンター越しに、優しい眼差しで話を聞く彼女の姿に、客たちは癒されたという。
○第一話「ギターリスト」
今夜、まだケイティ・ミンの姿はなく、店の中ではバーテンダーが一人時間を持て余していた。やがて一人目の客がやってきた。彼はケイティがいないことを知ると、残念そうな表情を浮かべた。
この男、何も喋らず時折両耳を塞ぎ、考え事をしているようだった。しばらくして男はバーテンダーに言った。
「君、音楽を止めてくれないか。もう少しなんだ」
バーテンダーには部屋の中で頭を抱える男の姿が見えた。
○第二話「ボクサー」
最初の客が来てしばらく経ち、徐々に客が入ってきた。バーテンダ一1人と数人の客。だがケイティの姿はない。客はみな、同じ目的で彼女に会いに来ていた。そして誰一人不満は言わず、ただじっと待っていた。会話のない、寡黙な状態が続いた。
やがて客の中の一人、鋭い眼光を持つ男が口を開いた。
「もう一杯くれないか」
「良いのですか?」
男は、急に優しい笑みを浮かべ、答えた。
「もう大丈夫なんだ。」
○第三話「フォトグラファー」
しばらく時が経った。客たちは徐々に硬さが取れ、店内には会話が聞こえるようになってきた。そんな中、一人がこんなことを言い出した。
「ところでケイティってどんな人なんだ?実はおれ、会ったことないんだ」
沈黙が誰も会ったことが無いことを示していた。
「たぶん・・」
写真を手に持った若い男性は言った。
「やさしくて、すべてを包み込むような人だと思う」
「まあ、そうだとは思うけどね。ところで、その写真のじいさん。誰なんだい?」
「僕の祖父です。この写真をケイティに見せようと思って」
「素敵な笑顔ですね」
バーテンダーはいった。